最近の将棋ブームには目を見張るものがあります。
そんななか、将棋に興味を持った方も多いと思います。私がまさにそうでした。
しかし、将棋は簡単ではありません。
とりあえず将棋を指してみようと、ハム将棋や将皇に挑戦するも無残に敗れ、結局辞めてしまったという方も多いはず。
そこで、今回は、初心者が最速で勝てるようになる「ゴキゲン中飛車」戦法について紹介し、さらに具体的な上達の仕方を説明したいと思います。
「なるべく早く勝てるようになりたい」という人は必見ですよ。
※現在、一般的には「角道オープン中飛車」は、
先手で使う場合「先手中飛車」、後手で使う場合、「ゴキゲン中飛車」と呼ぶのが一般的ですが、この記事では便宜上両者を「ゴキゲン中飛車」と統一表記します。
初心者が絶対に「ゴキゲン中飛車」を選ぶべき7つの理由
将棋で勝てるようになるには、得意戦法を身に着けないといけません。
しかし、戦法によって、初心者に向いているものと向いていないものがあります。
結論から言うと、将棋を最速で上達したいなら、絶対に中飛車を選ぶべきです。
なぜかというと、次にあげる7つの理由をすべて満たす唯一無二の戦法だからです。
では、ゴキゲン中飛車を初心者が学ぶべき7つの理由について、一つずつ見ていきましょう。
①相手がどんな戦法で来ても指すことができる
ゴキゲン中飛車は、相手がどんな戦法で来ても確実に指すできる戦法です。
なので、ゴキゲン中飛車を覚えれば、どんな相手とでも戦うことができます。
そんなの当たり前じゃないの?と初心者は思うかもしれませんが、
実は、将棋には、相手との同意がないとできないものがたくさんあります。
居飛車(矢倉、相掛かり、角換わり、横歩取り、一手損角換わり)などはまさにその典型で、
自分が「矢倉をやりたい」と思っても、相手が「矢倉はしたくない」と思えばできないのです。
これについては↓の動画で解説されています。
httpss://www.youtube.com/watch?v=IfaTigSP6TM
一方、中飛車は相手が居飛車でも振り飛車でも、急戦でも持久戦でも問題ありません。
だから中飛車一つを覚えれば、相手がどんな選択をしても戦える。
これは初心者が覚える最初の戦法としてマストな条件でしょう。
②弱点がない(相手がどんな戦法で来ても、互角以上に戦える)
ゴキゲン中飛車は極めて優秀で、いまだにプロでも決定的な対策が見つけられていない戦法です。
つまり、弱点がないのです。
(振り飛車の党の棋士のほとんどが中飛車を主力戦法に添えているのはその証拠でしょう)
一方、他の戦法は中飛車の様に「万能」ではありません。
例えば「四間飛車」は「穴熊」に弱いですし、
「棒銀」は「振り飛車」に弱い、と言う風に、なんらかの弱点を持っているのが普通です。
ゴキゲン中飛車のように弱点がない戦法は多くありません。
ゴキゲン中飛車を選択するということは、じゃんけんで自分だけブラックホールを使えるということ。
相手がグーを出すか、パーを出すか、チョキを出すかと予想する必要は一切なくなるわけです。
(将棋はじゃんけんと違って、相手を上回る実力さえあればグーでブラックホールに勝つこともできるわけですが、ならばあえてグーを選ぶ必要ありますか?)
③先手でも後手でも使える
将棋の戦法は先手用の戦法、後手用の戦法というものがあります。
例えば、ゴキゲン中飛車と同じく人気な戦法に石田流がありますが、 残念ながら石田流は先手の戦法。
石田流だけ勉強しても、後手になった瞬間なにもできなくなるわけです。
でも、ゴキゲン中飛車は、先手でも後手でもほとんど違いがなく攻めることができます。
④方針がわかりやすく(狙いが単純)
ゴキゲン中飛車は、攻める方針がわかりやすい戦法です。
飛車角銀桂の勢力を集中させて中央突破するのが基本的な狙いで、自分が何をすればいいのかわかりやすい。
簡単に言ってしまうと、狙いが単純なんです。
でも同じく単純だけど簡単に対策されていしまう棒銀と違って、
ゴキゲン中飛車は単純だけど対策するのは難しい。
なんてお得な戦法なんでしょう笑。
⑤攻め将棋なので、勝ちやすい
ゴキゲン中飛車は基本的に「攻める」戦法です。
そして、将棋と言うのは、プロでさえ、攻めるより受けるほうが難しい。
自分が殴るのと、相手が殴ってきたのを受け止める、どっちが楽ですか?って話です。
自分が殴るのは簡単ですよね。
でも、相手がどうやって殴って来るのか予想しないといけない。
将棋の場合「殴り方」が何千通りもありますが、
殴る方は、その殴り方を一つだけ覚えていればいい。
でも受ける方は、殴り方を全て知っていないと、攻撃を受けられない。
攻め将棋なら自分のペースで戦えます。
受け将棋は相手のペースで戦わないといけません。
知識のあるプロなら受け将棋もでるでしょう。
でも、初心者はまずは殴る方、つまり攻め将棋の戦法を選ぶべきです。
そして、ゴキゲン中飛車はまさに攻める振り飛車の代表例。
だから自分のペースで戦うことができるのです。
⑥プロ・アマ問わず広く採用されている戦法なので学びやすい。
ある程度上達してくると、独学ではなかなか上達が難しくなります。
その時に、他人の将棋を参考にすることになりますが、
その際にゴキゲン中飛車は使用者が多いのでお手本する人が多いのもうれしいところ。
またプロでも使用者が極めて多いので、書籍も豊富に出されています。
⑦覚える定跡が圧倒的に少ない。
歴史の長い戦法はそれだけ定跡が発展しています。つまり「憶えることがたくさんある」わけです。
「初心者向け」と言われる四間飛車などはまさにその好例です。
でも中飛車は狙いがシンプルで、比較的最近生まれた戦法なので、定跡はそれほど多くありません。
基本さえ覚えてしまえばそれで済むのです。
中飛車で強くなる3つのステップ
さて中飛車が優秀なことは確実に伝わったと思うので、
ここからは、実際にゴキゲン中飛車で上達する方法を3つのステップに分けて説明します。
ステップ1.まずは中飛車の基本(序盤)を学んで実践で試す。
まずは中飛車の基本を学んでから、ひたすら実戦で試しましょう。
基本を学ぶ最初の一冊としてオススメなのが、振り飛車党の強豪騎士戸部プロの著作、
『攻めて強くなる戸辺流中飛車(DVD付き)』。
将棋の本は、符号で説明されるので、初心者にはとっつきにくいですが、
こちらの本は動画解説のDVD+「次の一手」形式がセットになっている。
※「次の一手」は、クイズ形式で学んでいくものです。
DVDなので、勉強をするのに自分で将棋盤を用意する必要がないうえ、
居飛車急戦はもちろん、棒銀や四間飛車など、様々な戦形に対応しているので、
これ一冊で面白いほど勝てるようになります。
これをさくっと読んだら、さっそく将棋ウォーズなどのアプリで試してみましょう。多分面白いように勝てると思います。
この一冊を読んで、実践で学んでいけば、大体3~4級まではスムーズに昇級できるはずです。
ステップ2.詰将棋と手筋を学ぶ
基本を学んだあと実践を重ねることで上達しますが、
大体、3~4級になったころ頭打ちになるはずです。
それはなぜかというと「戦法を解説する本」で学べるのは、あくまで「序盤」だけだからです。
初めのうちは相手が弱いので、序盤を勉強すれば簡単に勝てます。
でも相手が強くなってくると、相手も序盤を勉強しているので、
差がつかなくなり、昇級ができなくなるのです。
そこで「詰将棋」「手筋」を学びます。
詰将棋は解説不要ですね。
手筋というのは、簡単に言うとテクニック・小技のことです。
手筋は先人が生み出した様々なテクニックなので、知れば知るほど勝てるようになります。
手筋は「中盤」向けと「終盤」向けがありますが、
中飛車の場合中盤も割と指しやすいので、まずは終盤力を強化することをオススメします。
具体的には、以下の三冊がオススメ。
『1手3手の詰将棋』
まずは1手・3手詰め。こちらはありがたいことに電子書籍版があるので、
スマホでも繰り返し説くことができます。
『5手詰ハンドブック』
詰将棋と言えばやはり「ハンドブック」シリーズ。
1手・3手詰めをマスターしたらこちらもやりましょう。
『寄せの手筋200』
これは将棋上級者の間では定番の一冊で、おそらく将棋を上達したい人なら全員が買うべき一冊です。
ステップ3.苦手な戦法の対策を学ぶ
ステップ2まで来ると、かなりのレベルになっていると思います。
そこからさらにレベルアップするためには、より深い定跡を学んで相手によって使い分ける必要があります。
ということで、戦法ごとの攻略法が書いた本を紹介していきます。
相手にした時に自分が苦手だなと思う戦法が出てきたら、その戦法対策の本から少しずつ読んでいくことをオススメします。
・『対振り革命 中飛車左穴熊』……三間飛車・向かい飛車対策
相振り飛車に的を絞った一冊。
中飛車左穴熊は、元々は東大将棋部が開発し、後に今泉さんがプロ相手に採用して連戦連勝した戦術です。
相手が振り飛車にしてきたとき限定の戦術なので最初に学ぶには適しませんが、
穴熊はやはり勝ちやすい戦法なので、慣れてきたらぜひこの本を手に取ってみてください。
(私の場合、普段の勝率は五割弱ですが、中飛車左穴熊をやった場合の勝率は、七割を超えています)
・『これが決定版! 相中飛車徹底ガイド』……中飛車対策
相中飛車を取り上げた貴重な一冊。
この記事で繰り返し述べていますが、ゴキゲン中飛車は極めて有力な戦法です。
それゆえ、相手も中飛車を選択してくることが多い。
そしてその場合、お互いに「最強の戦法」であるがゆえに、膠着状態に陥ってしまいやすいです。
実際、私も、相中飛車がとにかく苦手でしたが、この一冊のおかげで今はかなり克服できました。
・『振り飛車最前線 ゴキゲン中飛車VS超速▲4六銀戦法』……超速3七銀対策
ゴキゲン中飛車は大変有力な戦法と繰り返し述べてきましたが、
現在このゴキゲン中飛車対策として、プロの間で最有力とされているのが「超速」という戦法です。
最有力というだけあって、対策を知らないとあっという間に敗勢に陥ってしまう戦法でもあります。
しかしちゃんと対策を知っていれば互角に戦えますので、超速が苦手だなと思い始めたらぜひこの一冊で勉強してみてください。
ただ、超速はプロ向けの戦法とされているので、アマチュアが指しこなすのは難しいので、
初心者のうちはほとんど目にしないかもしれませんね。
・中飛車破り 一直線穴熊徹底ガイド……穴熊対策
アマチュアの中飛車対策としておそらくもっとも簡単で破壊力があるのが「一直線穴熊」。
先ほど相振り対策の紹介でも述べましたがやはり穴熊は勝ちやすい。
そこで、居飛車側が穴熊を目指してきたときにどうするかは知っておかないといけません。
ただ残念ながら「居飛車穴熊破り」の本は現時点では発売されていません。
なので、「中飛車破り」の本を読んで、居飛車穴熊破りを学びましょう。
※なお、本書の紹介の帯に「中飛車穴熊対策の決定版!」と書いてありますが、あくまで煽り文句です。プロ間でも中飛車対穴熊は互角、ということになっているのでご安心を。
ステップ.0(番外編) プロの棋譜を楽しむ
昔は今ほど情報がなかったので、上達する方法と言えば「プロの棋譜を並べること」でした。
上達するという観点では、プロの棋譜はあまりにレベルが高く初心者向けではありませんが、
しかし自分が使っている中飛車で、プロの棋士が戦っているところを見るのは、なかなか楽しく、モチベーションが上がります。
ここではゴキゲン中飛車を採用する確率が高い棋士を紹介しておきます。
(以下、タイトルは敬称略)
・久保利明
……現在最強の振り飛車党棋士。振り飛車のエースです。
・今泉健司
……戦後最年長の41才でプロデビューした異色の棋士。NHK杯ではあの藤井聡太七段に勝利。二度目の奨励会時代には、「コロンブスの卵」とまで言われた衝撃的な新戦法「二手目△3二飛」を生み出した。他にも棒銀でA級棋士に一時優勢を築いたり、とにかく面白い将棋を指す。
・菅井竜也
……平成生まれとして初めてタイトルを獲得。次々と独創的な新戦術「菅井新手」を生み出す。
・都成竜馬
……将棋界きってのイケメン棋士。奨励会時代にプロの棋戦で優勝した才能の持ち主だが、年齢制限26歳のギリギリで昇級するなど苦労もした。彼もまた「都成新手」と呼ばれる数々の新戦術を生み出している。
本当はまだまだ紹介したい棋士がいるのですが……今日はこの辺で勘弁しておきましょう笑
まとめ 初心者が勝ちまくりたいなら、最強の戦法ゴキゲン中飛車を選ぼう
ということで、初心者向けの戦法としてゴキゲン中飛車を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
中飛車は、本当にすぐに勝てるようになるうえに、トップ棋士も愛用する戦法ですので、皆さんもぜひ勉強してみてください。
将棋ウォーズなどのネット将棋でも勝ちまくれますよ!